生物多様性のメリット

生物多様性のメリットはなんだろうか。
なんで生物多様性を守らなければならないのかが分からなくなってきたので考えてみた。
生物多様性のメリットはなんだろうか。

「資源」として有用だから?
例えば、薬品(ペニシリンなど)、素材(クモの糸など)、遺伝子(ホタルの発光遺伝子など)。

「アイデア」として…?
例えば、生体工学(ヘビ型のロボットなど)
(TED ジャニン・ベニュス:行動するバイオミミクリー)

「癒し」として…?
例えば、どこかの生物学者は、日本人なのにジャングルに郷愁を覚えるそうである。
まだ、どこかの小説家は、ジャングルには多様な生物で満たされているからなのか、ジャングルにいると、安心するそうである。
ということをどこかで読みました(いつか出典明示できたらな)。

でもこれらは直接的にはヒトにしか享受されない恩恵だ。
生物多様性の本当のメリットはなんだろうか。

で、昔「どうぶつ奇想天外!」で、千石先生がおもしろい比喩をしていたのを
思い出しました。
ネットで探して見たら、なんと、Wikipediaに同じ文言が載っていました。
さらにさらに、千石先生、あちこちで同じ話をしているようで、Wikipediaさんに以下のページを教えてもらいました。

そういう風にいろんな生き物が絶滅しそうな状態にあります。
あるいは、もはや絶滅してしまいました。
これは非常によろしくない。
なんでよろしくないかっていうと、ここに飛行機が飛んでるとします。
もしエンジンなんか取っちゃったら飛ばないのは当たり前ですね。
例えば、簡単な部品でここら辺にリベット、ねじですね。
そのリベットが飛行機が飛びながら、一個落っこった。
大概そのまんま飛んでますよ。
2 個落っこった、10 個落っこった、100 個落っこった、1000 個落っこった。
そのうち必ず墜落しますね。
 要するに、飛行機は部品の全体集合でできあがってるから、重要な部品は当たり前だけど、簡単な部品であっても、だんだんなくなれば、飛べなくなるのは当たり前ですね。
宇宙船地球号という飛行機も、いろんな生き物の種類っていう部品で成り立ってるわけなんです。
その部品が1 個1 個なくなったら、この地球号が、墜落するってのは当たり前の話ですね。
だから絶滅させちゃいけないわけです。
(2010inTokyo_report.pdf p22)

インフラの勉強をしてて、この文を改めて読むと、思うことがあります。

まず、一つひとつの種はなんらかの役割(ネジという)を持っている、
という前提がこの文にはあります。
実際、そうだと思います。
自然界の一つひとつの種は、それぞれのニッチに応じて役割を担っている。
生産者であったり、消費者であったり、分解者であったり。

で、それらが一つぐらいならなくなっても何も変化はありませんよ、飛行機は堕ちませんよ、
というのが千石先生の比喩。
それはきっと、その影響を何かが吸収してくれているからなんだと思います。

吸収しているのは何か?
分からんけど、きっとそこには生態系特有の仕組みがあるのだと思います。

が、そのひとつとして、「冗長性」があるのではないかな、と私は思います。
そのネジがなくなっててもいいように、バックアップ装置があって、それが働いている。
だから飛行機は飛び続けられる。
(まぁ本物の飛行機の場合はバックアップ装置があるというよりも、単にネジひとつあたりの寄与度が小さいから、それがなくなっても変化はない、というのが現状だと思うけど…。寄与度って何?)

実際、自然界には似たような種がたくさんある。
つまり、お互いが相手のバックアップとなれるような種がたくさんある(適当)。
もちろん、それぞれ個別のニッチを獲得し、生きている。

だからもし、ひとたび一つの種がなくなっても、近い種がその役割を担ってくれる。
つまり、バックアップしてくれる。

平時は、その存在がわりかし冗長にしか見えないけど、なにかが起こると、
残ったものがその役割を引き継ぐ。

で、生物の多様性がなくなると、どうなるのかというと、
どんどんその役割を引き継ぐものがなくなってしまう、ということ。
冗長性がなくなって、役割が一箇所に集中する、ということ…。

つまり、生物多様性というのは、生態系という我々が生きているフィールドに対して、
冗長性という機能を提供してくれているのではないかな、という結論をひねくり出せました。
生物多様性による冗長性が、変化に強い、安定的なフィールドを我々に提供してくれている。
これが生物多様性のメリットなのではないかな、と私は思います。

つまりは、宇宙船地球号とやらは、生物多様性という冗長性をもったシステムによって、安定航行できている。
だから、生物多様性ちゅうのは大事なんだろうな、と思うのです。

【補足1】
ここでいった生物多様性とは、

多様性の3つの階層

  • 遺伝的多様性
  • 種の多様性
  • 生態系の多様性

(はてなキーワード > 生物多様性)

の内、主に「種の多様性」のみを指すのかも。

【補足2】
もちろん、生物多様性のメリットは冗長性だけではなく、
環境変化に対応するためのリスク分散というのもあるのかもしれない。
どれかが生き残ればいいように、様々な種を備えておく。
そういう遺伝子の戦略なのかもしれない。

また環境に適応する面からも、画一的な生物群よりも多様性を持った生物群の方が生き残りやすいと考えられる。
環境に変化が起きたとき、画一的なものは適応できるかできないかの二択であるが、多様なものはどれかが適応し生き残る為の選択肢が多いからである。
(Wikipedia 多様性)

ん〜、ちゃんと進化論とか生態系の勉強したいな〜。
なんか面白い本ないかな。ドーキンスを過激に読もう。
(もう30年も前の本なんだ…。まだ過激なのかな)

【補足3】
なんかまわりくどいな。
生物多様性のメリットは、環境を保全してくれること。
でしょ。要は。
このエントリは、なぜ生物多様性が、環境を保全してくれるのか、
というのを考えたものなのか?
それにしても、なんかまわりくどい。
もっと簡単に言える気がするし、みんなが簡単に言ってくれているような気もする。

【補足4】
確か福岡伸一さんの「生物と無生物の間」で、柔らかな動的平衡、的な感じで、
説明してくれていたような気がする。
あれは、生物個体の中での話だったけ?生態系の話だったけ?
あとで、読み返そう!

【補足5】
このエントリの一部を要約すると、
「多様性とは冗長性をもつもの」
という風になってしまう。
こうしてみると、明らかに矛盾しているような気がする。
多様性というのは、唯一無二のユニークなものの集合体であって、
決して冗長的で、キャラがかぶっている、という類の印象を生まない。
例えば、人材の多様性という文脈で使うダイバーシティは、まさに、冗長性という考え方とは、
相反する概念である気がする(同じ土俵の言葉ではないのかな、そもそも)。
まぁ、「冗長性 = 単一的(キャラがかぶっている)」ということではないのだろうから、矛盾はしてないのかな。

【補足6】
そろそろ生物多様性の崩壊を止めないと、生態系からしっぺ返しがくるような気がする。
(どこまで進んでいるのか、把握すらしていないですが)
人間向けの冬虫夏草なんぞが生まれたとしても、不思議はない。
まぁ下記サイトを見ると、共生、という感じがしますが(笑)
(参考:大竹茂夫 冬虫仮装館の秘密)

【補足7】
あ、おれ、昔読んだこの本に書かれていたことの影響を受けていただけなのかも。

「システムの安定性をささえるもの」
 図7の尾瀬ヶ原生物群集における食物連鎖の表(118〜119ページ)をもう一度見ていただきたい。
実に複雑に入り組んでいる。
もし、自然が意図的に設計されたものであるとするなら、なぜもっと単純なシステムを作らなかったのか不思議な気がしてくる。
食物連鎖の一つのレベルに、一つの種の生物しかいない場合には、なにか不都合が起きるのだろうか。
地球上に150万種もの生物がいる必然性はあるのだろうか。
 食物連鎖だけではない。
先に述べた水の循環、炭素循環、窒素循環など、あらゆる物質循環のシステムは、やたらにチャンネルが多く、その厳密なフローチャートを描くことがほとんど不可能なほど複雑な回路網を形成している。
 この複雑さが何に役立つかといえば、システム全体の安定性に役立つのである。
変化に対する適応性は、チャンネルが多いほど高くなる。
一つのチャンネルがだめになれば、別のチャンネルが引き継ぐことができるからである。
(エコロジー的思考のすすめ p154-155)